『Card Dungeon』レビュー。洗練されたボードゲーム風ビジュアルと、物足りないローグライク

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2014年10月2日にApp Storeで配信が開始した『Card Dungeon』。ビジュアルはボードゲーム風、戦闘はカードゲーム、ランダムに生成されるマップや恒久的な死はローグライク、これら3つの要素を混ぜ合わせたターン制のダンジョン探索型RPGである。iOSとWindwos Phone版が400円、Android版は452円(Amazonは432円)。開発を手がけたのはプログラマーのFredrik Skarstedt氏と、デザイナーのRyan Christy氏。2人はPlaytap Gamesとして活動している。

本レビューは、iOS版『Card Dungeon』(バージョン1.1と1.2)をiPhone 5でプレイしたもの。

 

ゴージャスなビジュアル

矢印マークが描かれた青いタイルが、現在のターンで移動できる場所である。戦闘中、1ターンの行動範囲は1歩のみ。

矢印マークが描かれた青いタイルが、現在のターンで移動できる場所である。戦闘中、1ターンの行動範囲は1歩のみ。

『Cardinal Quest』や『Dungelot』などといったモバイルで遊べる定番のローグライク作品とは違い、ボードゲームを意識したことによりビジュアルは立体的である。クラシックな雰囲気を出したかったからなのか、主人公のCrusader、行く手を阻む恐ろしいモンスター、すべてのキャラクターは紙で作られた駒のようになっており、鼻息を吹けば倒れてしまいそうな薄さである。

見た目の良さだけでゲームそのものの面白さが決まるわけではないが、色合いが美味しそうだから食べたいと思える料理があるように、『Card Dungeon』は1枚のスクリーンショットを目にしただけでも遊びたい気分にさせてくれるだろう。私が本作に興味を持ったのも、Fredrik Skarstedt氏がTwitterに投稿した画像がキッカケだ。氏はUIデザインを得意としており、それが存分に発揮されている。見事に私は、刺激的なドレスに身を包んだ“いい女”に一目惚れしたのである。

実際に触れてみると確かに“いい女”だった。しかし、取り扱いに困ることもある。ボードゲームを意識しすぎたからなのか、キャラクターのライフとマナの残量は駒の片面にしか表示されない。そのため、場合によっては、視点を頻繁に回転させることになる。また、カメラは常にプレイヤーを中央に置こうとするのも不便に感じられた。もちろんこれは好みの問題で、人によっては気にならないだろうし、すぐに慣れるはずだ。

定番のローグライクと同じく、ゲームはターン制である。プレイヤーが行動を終えれば、次はモンスターが移動や攻撃をおこなう。宝箱や戦利品を拾う、手に入れたポーション(ライフ/マナ)を飲む、これらは行動には含まれない。ようするに、1歩進むか手札を使ったときのみターンが終了する。主人公はバッグを持っておらず、手に入れたカードを保管することはできない。バッグが満タンの状態をイメージしてもらうほうがいいかもしれない。カードを発見した場合、それを手に入れたければ、現在所持しているものを捨てる必要がある。

バッグを持たせなかった理由はわからない。ダンジョン探索をよりいっそう過酷なものにしたかったのかもしれないし、開発者がインスパイアされたボードゲームがそのような仕組みだったからなのかもしれない。十字軍がバックパックを背負っている姿なんて想像できないし、おしゃれなトートを持ち歩いているなんてありえないだろうから、リアルさを優先したのかもしれない。

やっかいなのは、宝箱や戦利品のカードを確認した時点で「取る」か「捨てる」を選択しなければならないこと。とりあえずいったん捨てて、後から拾うといった甘えは通用しない。

 

プレイヤーを苦しめるカードの劣化と、いまいち盛り上がりに欠ける戦闘

すでにカードはボロボロである。この状態で、4体のモンスターを倒しきることができるだろうか。

すでにカードはボロボロである。この状態で、4体のモンスターを倒しきることができるだろうか。

画面下部には戦闘用の手札が並んでいる。この3枚と装備品のカードは、使用回数などに応じて劣化していく。タイルを酸の風呂に変える「ACID BATH」が強力だからといって何度も使っていれば、いずれは破れてしまい効果を失うのだ。この劣化は数字では表されないが、少しずつ破れて印刷が薄くなっていくといった見た目の変化で判断できるようになっている。リアルさを感じられるこのアイデアは面白い。個人的には「スナック菓子の油染み」などもほしかった。

右が劣化したカード。あと数回で使えなくなる。左下の「4」は、使用時に必要なマナの数値。マナはターン終了時に2、その場で休憩すれば5回復する。「common」はカードのレアリティを表している。

右が劣化したカード。あと数回で使えなくなる。左下の「4」は、使用時に必要なマナの数値。マナはターン終了時に2、その場で休憩すれば5回復する。「common」はカードのレアリティ(5段階)を表している。

どんなに強くても、いずれはゴミと化す。3枚の手札がすべて破れてしまった場合、プレイヤーは攻撃手段を失う。たとえ武器を装備していたとしても、基本攻撃がないため、ダンジョン内でひたすら逃げ回ってカードを探さなければならない。そうならないように、たとえまだ劣化しきっていなくても、拾ったカードを交換しなければならない場合もある。この駆け引きはローグライクの面白さのひとつだろう。

1000以上登場する儚いカードは、使いやすいかどうかは別として、どれもユニークなものばかりだ。序盤のうちは敵のライフを削るだけといったシンプルなものが多いが、ダンジョンを進むにつれ特別な効果を持つカードが手に入りやすくなる。たとえば直接攻撃に気絶などの状態異常を追加したもの、離れた場所にテレポートして範囲攻撃するもの、複数のタイルを溶岩の海にするものなど、とにかく強力な手札が揃うようになる。主人公のCrusaderはレベルアップしないが、宝箱や戦利品から出現するカードが強くなっていく仕組みである。

カードゲームにインスパイアされたという戦闘は、良くできているとはいいがたい。たしかにどのカードもユニークなものばかりだが、だからといって戦術の幅が広いというわけではない。1ターンで使用できるカードは1枚のみで、状況に応じて攻撃方法を考えたり、複数のカードを使って一気に敵のライフを削るといったことはできず、現在の状況に最適な手段を考えるというよりも、破れていないからこのカードを使うといった単純な戦いになりがちである。基本攻撃がないのであれば、『Magic: The Gathering』ほどではなくても、Richard Garfield氏のお気に入りであるローグライクカードゲーム『Dream Quest』ぐらい駆け引きのある戦闘にしてほしかった。

 

ボスと遭遇。

ボスと遭遇。

『Card Dungeon』の世界には、3つの章で区切られたダンジョンが7つ存在する。物語を進めるには各チャプターのボスを倒し、出現するポータルに飛び込まなければならない。ボスはどこからともなく歩いてやってくるわけではなく、こちらが部屋へお邪魔したときに遭遇する。もちろんどこにいるのかわからないため、片っ端からドアを開けることになる。

仲間の毒によって自滅するモンスターたち。

仲間の毒によって自滅するモンスターたち。

個人的に、ボスは強くあるべきだと思っている。今までのザコ戦に比べれば、涙が出るほど難しくあってほしい。しかし、本作に登場するボスのほとんどは“マヌケ”なだけである。モンスター同士に攻撃の当たり判定があるため、扉を開けても部屋に入らず廊下をウロウロしたり、「Rest」をタップして休憩しているだけでポータルの門番は自滅してしまう。その結果、カードを使って攻撃する機会は減っていき、プレイヤーを苦しませるための手札3枚という制限も、それほど気にはならなくなってしまうだろう。

これは悪い点というわけではなく、死を避けることが最も重要なローグライクにおいて、“チキン”な戦い方は戦術のひとつである。傷を負わぬよう立ち回り、いかにして敵を倒すかを考えるのは楽しいと感じるはずだ。それでも、あっけないのは事実だが……。

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多くのローグライク作品と同じように、ダンジョンでは商人と遭遇することがある。唯一のコインの使い道である。商品棚には弓や剣が並んでおり、何でも売ってくれそうな見た目ではあるが、取り扱うのはライフとマナのアップグレードのみ。商人は敵の攻撃や罠にかかって死んでしまうこともあるので、見つけたらなるべく早く取引するといいだろう。

『Crypt of the NecroDancer』をプレイしてから、歌わない商人に魅力を感じなくなってしまったのは私だけではないはず。

 

アップデートで失われた魅力

主の加護を受けた。この後、劣化したカードは新品になる。

主の加護を受けた。この後、劣化したカードは新品になる。

先日のアップデートで、『Card Dungeon』はバージョン1.2になった。さまざまな変更やバグ修正がおこなわれたが、最も気になったのは「ボスを倒すと自分も死ぬ可能性が生まれた」である。

何度も言うように、カードは劣化していく。それを修理する方法は一つ、赤い液体がなみなみと注がれた「Shrine」に触れ、主の加護を受けることである。運が悪ければ呪い(ライフとマナが減る)を受けてしまうこともあるが、今にも破れそうな手札を新品に戻すためにはチャレンジしなければならない。「Shrine」が置かれている部屋は毎回ランダムであり、一度も遭遇できないこともある。

マグマは、あっという間にすべてを飲み込む。

マグマは、あっという間にすべてを飲み込む。

「Shrine」を発見したとき、あなたの手札がほとんど劣化していなければ、おそらく主の加護か呪いを受けようとはしないだろう。ひとまず残しておいて、ボス討伐後に再び「Shrine」のもとを訪れようと考えるはずだ。これは『Card Dungeon』攻略の一つであり、多くのプレイヤーがそうしていたのではないだろうか。ところが、バージョン1.2になってから、ボスを倒すとダンジョンが崩壊するようになった。すべてを飲み込むマグマが床から噴出し、急いでポータルに飛び込まなければ死んでしまうため、ボスを倒してからほかの部屋へ移動することはほぼ無理になってしまった。

「Shrine」とボスが同じ部屋に出現する確率が上がっているように感じられるので、これに関しては特別大きな不満というわけではない。ただ、ボス討伐後にカードを探すことができなくなってしまったのは不満である。たとえダンジョンの出口が見つかったとしても、次に備えて装備やアイテムを探すリスク&チャレンジは、『Card Dungeon』だけでなくローグライクの魅力の一つではないだろうか。それができなくなってしまったことで、大事なものが抜け落ちてしまったようにも感じられる。

おそらく開発者は、今回のアップデートで、よりいっそう難しいものにしたかったのだろう。ダンジョン探索は過酷なものであり、“やすらぎ”なんて不要なのかもしれない。

 

引き継がれるもの

カードを選択し、ドラッグで「+」「-」にはめこむ。

カードを選択し、ドラッグで「+」「-」にはめこむ。

ゲーム開始時、プレイヤーはCrusaderのTrait(特徴)を選ぶことになる。GoodとBadの2種類があり、どちらも1つずつ決めなければならない。初回プレイ時は、自分のターンになったときに自動でマナを1消費してライフが5回復するチャンスを追加する「Crusader Breath」、商人からライフとマナどちらか1つしか購入できない制限が追加される「Cheapskate」のみ選択できる。

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Goodは11種類、Badは6種類、これらをアンロックするには、ダンジョンで手に入る「Knowledge Gem」を使う。この宝石は、何度死んでも消えることはなく、一度アンロックしたTraiが再びロックされることもない。引き継がれるものは、これだけである。

誰だってBad Traitはできる限りマシなものを選ぶはずだ。私なんて「Cheapskate」以外を選んだことがない。ほかのTraitの存在には、何の意味があるのだろうか。それはおそらく、プレイヤー自身がゲームの難度を調整するためだと思われる。

Traitは自分で選べないほうがよかったように思う。ダンジョン内で起きる何かのイベントや、「Shrine」などに触れたとき、強制的に決められるほうが運要素もあり面白いのではないだろうか。探索の途中で立ち回り方も変化するだろうし、より緊張感が増すはずだ。

 

仕立ての良いドレスを着ていることは間違いない

ボス部屋の扉を開けたら「No Move」「Stun」「Skip Turn」そして各種DoTを浴びせられ、何もできないまま死ぬこともあるし、「Rest」を連打しているだけで敵が全滅することもある。簡単と難しいの差が激しく、ゲームバランスの調整がうまくできていない感じがする。最初から最後まで難度が変わることもなく、毎ターン脳裏に“死”の文字がチラつくこともない。これほどまでに緊張感のないローグライクが、ほかにあるだろうか。

先日PCでリリースされ、今後iOSなどモバイルへの対応も視野に入れているとされる『Sproggiwood』は、とてもかわいらしいビジュアルとは裏腹に、なかなか戦術性の高い作品だった。アーリーアクセスが解け正式に発売された『Dungeon of the Endless』も、扉を開けることで1ターン進むといったユニークなシステムを持ち、素早く的確な操作が求められるローグライクだ。また、リズムゲームを取り入れた『Crypt of the NecroDancer』は、気分が高揚するBGMと、驚くほど高い難度が特徴的だった。それらのローグライクと対等な作品は、そう簡単に作れるものではないと思うが、『Card Dungeon』からはビジュアル以外に強い魅力を感じることができなかった。

とはいえ、数日にわたって遊び続け、何度もクリアしたのは事実である。およそ10か月ぶりにレビューを書きたいと思ったのも事実だ。デビュー作ではないが、Playtap Gamesにとっては最も重要な作品だろう。今後のアップデートで、どのように生まれ変わっていくのか。好きな言葉ではないが、期待したい。

参考: Card Dungeon / Cardinal Quest / Dungelot / Crypt of the NecroDancer / Sproggiwood / Dungeon of the Endless / Magic: The Gathering / Dream Quest

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じめじめとした洞窟の中で暮らしています。

4 Responses

  1. Pojo

    私もこのゲーム出た日に買いました、が。移動のテンポが悪くてやる気が起きませんでした。
    アップデートで良くなったと期待しましたが、さほど変わらず。積みゲー。
    ネクロダンサーが、iosに来て欲しいです…

    返信
    • Troll

      私のSteamアカウントにも大量の積みゲーが……
      Necrodancerをタッチデバイスで遊ぶと、指が痛くなりそうです ……。ただ、デベロッパーはスマートフォンやタブレットでも発売するかもしれないとコメントしていますので、可能性はゼロじゃないです。とりあえずPC/Mac/Linux版の正式リリースが現在の目標だとか。

      返信
  2. サムさんs

    どうしようか悩んでたのでとても参考になりました
    すごく惜しい感が伝わって来ますね
    しかしSproggiwood知らなかったんですがやたら可愛いですね・・・

    返信
    • Troll

      つまらないゲームというわけではないのですが、物足りないと感じました。本当に惜しいです。

      Sproggiwoodは、見ているだけでほのぼのしますが、なかなか難しくて苦戦します。もうすぐオータムセールなので、そのときにチェックしてみるといいかもしれません。

      返信

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